研究概要 |
1.ラットにおけるFluid percussion injuryモデルの作製 ペントバルビタール麻酔下にラットの頭頂部頭蓋に直径3mmの穴を穿ち、プラスチック製筒を瞬間接着剤と歯科用セメントで頭蓋に固定した。1日後に、Fluid percussion装置(Dragon fly)を前日固定・作製した筒に接続することによって、脳硬膜上から一定の衝撃を加えた。衝撃圧変化をオシロスコープで記録し、一定圧(2.0~2.5Atm)が得られていることを確認した。上記の強さのFluid percussionによって、受傷部の神経脱落、局所脳浮腫、血液-脳関門の構造的破綻が生じていることを、それぞれNiss1染色、エバンスブルー漏出測定、透過電子顕微鏡観察で確認した。 2.脳外傷部位のHMGB1トランスロケーションの評価 上記の条件下、HMGB1トランスロケーションについて受傷後、6、12時間後に脳を固定し、共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫組織化学的染色法で観察をおこなった。受傷部位では、衝撃を受けた方向に一致して神経細胞内のHMGB1が消失していた。これらの神経細胞内では、MAP-2免疫陽性構造も低下していた。それに対し、アストログリア細胞とミクログリア細胞の核内HMGB1は受傷部位でもよく保持されていた。 3.抗HMGB1単クローン抗体効果の評価 抗HMGB1単クローン抗体(#10-22)あるいは対照抗体(anti-KLH,IgG2a)を、1mg/kg経静脈的に脳外傷受傷直後と6時間後の2回投与し、脳血管透過性亢進に対する効果をアルブミン(エバンスブルー)漏出の抑制効果で評価した。その結果、抗HMGB1抗体はエバンスブルーの漏出を85%抑制した。 以上の結果から、抗HMGB1単クローン抗体は脳外傷急性期の脳血管透過性亢進を極めて有効に抑制できる治療薬であることがわかった。
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