研究課題
小Maf群因子は、癌遺伝子v-Mafの関連因子で、塩基性領域・ロイシンジッパー(bZip)構造を有し、それ自身でホモ2量体として、あるいは、p45やNrf2などのCNC群因子とのヘテロ2量体として、Maf群因子認識配列(Maf recognition element; MARE)に結合する。これまでに申請者らが作成した遺伝子改変マウスの解析より、Nrf2-小Maf2量体は異物代謝・酸化ストレス応答に、p45-小Maf2量体は血小板形成に重要であることが明らかになった。本研究の目的は、代謝・内分泌・酸化ストレスなど体内環境のダイナミックな変動が、造血細胞の分化と成熟・細胞死に及ぼす影響を検討し、その分子機構をCNC-Maf2量体転写因子機能の理解を通して明らかにすることである。本年は、p45のマイクロアレイとchIP-seq解析を通してp45が直接活性化している標的遺伝子を明らかにした。とりわけ、血小板の機能を支える因子群が数多く含まれており、p45が血小板の産生のみならず、血小板の品質維持にも重要な役割を果たしていることが示唆された。そこで、野生型p45のかわりに、機能不全分子であるp45ΔNTRを巨核球において発現する遺伝子改変マウスを作成して、その血小板数と血小板の機能を調べた。その結果、同マウスでは、軽度の血小板減少があると同時に、同マウスの血小板はトロンビン刺激に対する応答が低下していることがわかった。したがって、p45は、血小板の産生とともに、血小板機能の確保にも重要であることがマウス個体レベルで示された。さらに、担癌マウスにおいて、巨核球の過成熟がおこることを見いだし、p45とその標的遺伝子の発現が上昇していることを明らかにした。こうした巨核球は、より活性化能が高い血小板を産生しているものと推測される。
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