研究課題
脳神経系における脂質ラフトの構築とガングリオシドの役割に関して、各種の糖脂質糖鎖欠損マウスを用いて検討を行った。その結果、CD55、CD59およびN-CAMなどのGP1-アンカータンパク質は、ガングリオシドの欠損の程度に比例して、脂質ラフトから離散する傾向が見られた。すなわち、野生型<GD3合成酵素K0<GM2/GD2合成酵素K0<ダブルK0マウスの順で局在異常が強く見られた。また、caveolin-1、flotillin-1などの脂質ラフトマーカーも同様に脂質ラフトからの離散傾向を示した。これらの生化学的な異常所見は、抗体による免疫組織染色においても示され、ガングリオシド欠損がラフト構成分子といわれる分子群の細胞膜かちの逸脱と細胞質への散在所見として認められた。これらの糖鎖変異マウスの脳における、脂質ラフトとnon-ラフトにおける脂質成分の分布を解析した。その結果、予想されたように、コレステロールとスフィンゴミエリンおよび糖脂質類は基本的にどの変異マウスでも脂質ラフトに大部分が検出された。しかしそれらの絶対量は、ガングリオシドの欠損程度に比例して低下する傾向が見られた。一方、リン脂質に関しては、どの変異マウスにおいても、ラフト、non-ラフトの両フラクションに検出された。しかし、リン脂質もガングリオシド欠損の程度に伴って、脂質ラフトにおけるレベルが明らかに低下した。現在これらの脂質分子の脂質の化学組成をMSにより解析中である。さらに、これらの変異マウスの脳よりグリアの初代培養系を確立して(錫村博士との共同研究)、アストログリアにおけるGD3などのb-系列ガングリオシドの発現を確認した。現在、ミクログリアンの調製法を検討中である。
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