研究課題
生体内における脂質ラフトの構築と制御におけるスフィンゴ糖脂質の機能重複性と階層性の解明のため、これまで解析してきたガングリオシドGM2/GD2合成酵素とGD3合成酵素のダブルノックアウトマウスについて、炎症反応から神経変性にいたる過程に関わる分子の変化と意義を検討した。ダブルノックアウトマウスの小脳で見られたグリアの増生と炎症反応について、各種ノックアウトマウスの脊髄を用いて同様の解析を行い、軽度ではあるが、アストログリアの増殖とミクログリアの集簇、および補体関連遺伝子の発現増強を確認した。これらの結果は、炎症反応から神経変性に至る組織変化が、神経系に普遍的に起こっていることを示唆した。ダブルノックアウトマウスの神経系において、一般的に免疫・炎症に関わる遺伝子の発現亢進が認められた一方で、これまで神経系でほとんど発現が認められず、機能も明瞭でない遺伝子の発現亢進も認められた。その中で、Wisp2/CCN5およびperilipin-4という2種の遺伝子産物について、その発現部位と発現亢進の意義の解明を行った。Wisp2/CCN5については、脊髄のニューロンでの発現を確認した。さらに、cDNA発現培養株を用いて、その発現が神経突起の伸長促進とアポトーシス抵抗性の増強に働くことが示された。即ち、Wisp2/CCN5は、ガングリオシド欠損により惹起された神経変性に抗して、神経組織の機能維持と生存のための生体反応として発現が亢進したことが示唆された。一方、perilipin-4は本来、脂肪滴の形成過程で発現する分子として報告されていたが、神経系ではミクログリアに発現し、lysosomeに局在することが示された。その意義として、神経変性により産生されたdebrisを貪食、消化するために発現亢進したと考えられた。これらの反応はガングリオシド機能の重複性を示す現象と考えられる。
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