研究概要 |
Ror2及びRor1受容体チロシンキナーゼは、Wnt5aの受容体として機能し、β-カテニン非依存的なWntシグナル伝達を司り、細胞極性・細胞移動を制御すること、また骨肉腫細胞ではWnt5aとRor2が構成的に発現しており、恒常的にWnt5a-Ror2シグナルが活性化される結果、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)が発現誘導され、浸潤能が亢進している。本年度の研究では、まず上皮様癌細胞株であるA431細胞を用い、上皮間葉転換(EMT)関連転写因子であるSnailを構成的に発現させ、A431細胞にEMTを誘導したところ、Wnt5a及びRor2が発現誘導され、その結果Wnt5a-Ror2シグナルが活性化され、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP-2)の発現誘導とそれに伴う浸潤能の亢進が認められることを明らかにした。また、前述の骨肉腫細胞では構成的にSnailを発現しており、Snailの発現抑制を行うと、Wnt5aおよびRor2の発現が減弱する結果、MMP-13の発現誘導ならびに浸潤能が著しく減少することを見出した。これらの結果から、癌細胞におけるEMTとWnt5a-Ror2シグナルとの関連およびWnt5a-Ror2シグナルとMMPs誘導・浸潤能亢進の関連が示唆される。さらに、本年度の研究においては、マウス胎児大脳皮質における神経幹前駆細胞(NPC)の幹細胞性維持におけるWnt5a-Ror1及びWnt5a-Ror2シグナルの役割を初代培養NPCを用いたin vitro実験系ならびにin utero clectropration法によるWnt5a,Ror1,Ror2の発現抑制実験系により解析を行った。その結果、Wnt5a-Ror1、Wnt5a-Ror2両シグナルがNPCの幹細胞性維持において重要な役割を担うことが明らかとなった。
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