本研究の目的は、申請者が新たに見出したヒストンキナーゼAurora-Bとアルギニン残基メチル化酵素PRMT5との相互作用を新しい切り口として、ヒストンアルギニン残基のメチル化修飾という古くから知られている現象の制御機構を解明することである。アルギニン残基のメチル化転移酵素という分子レベルでの制御機構という新しい視点から、またアルギニン残基のメチル化されたヒストンがどのようなDNA配列と結合し、どのような実働分子を標的領域に呼び込み、アルギニン残基のメチル化がリン酸化、アセチル化およびリジン残基のメチル化など他のヒストン翻訳後修飾とどのように相互作用し、そしてどのように遺伝情報を制御するのか、その全貌を明らかにすることを目的とした。平成23年度は、1)アルギニン残基メチル化酵素ファミリーの一つであるPRMT4と結合するタンパク質を質量解析により同定した。2)その候補結合タンパク質の一つが関連転写制御因子NAC-1であり、細胞レベルの解析により、実際両者が細胞内で結合することを明らかにした。3)しかし、NAC-1タンパク質は、PRMT4の基質にはならなかった。4)その複合体に核内受容体コアクティベータNCoA-3が含まれることを明らかにした。5)さらに、細胞溶解液を用いたサイズ分画法によりこれらの複合体は450KDa程度の同じ分画に存在することが判明した。アルギニン残基メチル化酵素PRMT4はがん細胞内において、ホルモン受容体およびがん関連転写因子などの情報伝達系を調節しているという新たな知見を得た。年次計画に沿って、順調に計画は進行した。
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