研究概要 |
生理活性脂質ロイコトリエンB4の二つの受容体(BLT1,BLT2)の生体内における役割を解明するために以下の研究を行った。1)抗マウスBLT1単クローン抗体の樹立に成功した。2)デキストラン硫酸投与による大腸炎モデルを作成したところ、BLT2欠損マウスで症状の悪化を認め、腸管における過剰なサイトカイン(IL-6,IFN-γ)、ケモカイン(CCL21)、メタロプロテイナーゼMMP-9の発現を認めた。現在、詳細な分子メカニズムを検討中である。一方、BLT1欠損マウスでは野生型マウスとの間に症状の差を認めなかった。3)BLT1欠損マクロファージで、オプソニン化ザイモザンの貪食が減少していること、貪食の際のRac1の活性化が減少していることを見いだした。4)ゼブラフィッシュから3種のBLT関連受容体のcDNAを単離し、薬理学的にBLT1様の受容体が一つ、BLT2様の受容体が二つ存在することを見いだした。今後、アンチセンスモルブォリーノを用いてこれらの分子をノックダウンし、ゼブラフィッシュ発生におけるBLT関連遺伝子の役割を明らかにしていく。5)BLT2欠損マクロファージ、胎児線維芽細胞をLPS刺激した際のサイトカイン産生、NF-kBの活性化は、野生型マウス由来の細胞との間に差を認めなかった。6)C18固相カラムと、高速液体クロマトグラフィーを組み合わせることによって、BLT2リガンドである12-HHTを定量する系を確立した。本法を用いた測定の結果、血清中にはBLT2を活性化できる濃度(μM)の12-HHTが存在すること、大腸や小腸も、十分量の12-HHTを含有していることを見いだした。以上から12-HHT受容体であるBLT2は、恒常的に活性化されている可能性があると考えられた。(747字)
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