研究概要 |
受容体欠損マウスの解析:EGFP発現LLC細胞の肺転移実験を行い、BLT1欠損マウスで肺転移が亢進し、死亡率が上昇することを確認した。BLT1欠損マウスでは、肺組織中のCD4、CD8陽性T細胞、好中球の浸潤が低下しており、これらの細胞の移動の阻害によって、癌細胞の転移が抑制されたと考えられた。BLT2欠損マウスを用いた創傷治癒実験を行い、BLT2欠損マウスでは創傷治癒が遅延すること、ケモカイン、サイトカインの産生が減少していること、種々のケラチンタンパク質の発現が大きく上昇していることを見いだした。 マクロファージ・ケラチノサイトにおけるBLT1,2の機能解析:マウス骨髄由来マクロファージのFc受容体を介した貪食反応にLTB4とその受容体BLT1が必要であること、BLT1シグナルはRacとPI3KinaseのレベルでFcγ受容体のシグナル伝達とクロストークすること、Fcγ受容体シグナルを欠損させても、BLT1刺激によるRacの活性化だけで貪食が引き起こされることを明らかにした。炎症時に産生されるLTB4がマクロファージを活性化し、オプソニン効果に対して相乗的に働き、異物の排除を促進していることが明らかとなった。上記のBLT2欠損マウスとの関連で行ったin vitro実験において、BLT2遺伝子を導入したケラチノサイトでは、in vitroスクラッチ後の細胞の移動が促進することを見いだした。BLT2過剰発現によってMMP9をはじめとしたマトリックスプロテイナーゼの発現が上昇し、細胞外基質を分解することで、ケラチノサイトの移動が促進されていることが推定された。
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