研究代表者が発見したIκB-ζ(zeta)は、自然免疫刺激時に発現誘導され、炎症応答の選択的遺伝子発現の鍵を握る分子である。IκB-ζ遺伝子欠損マウスは、SPF環境下で皮膚や眼瞼(まぶた)結膜に慢性炎症を自然発症する。本研究では、誘導型転写制御因子であるIκB-ζの機能解析により、炎症応答制御の分子機構とその恒常性維持における生理的意義の解明を目指すものである。 IκB-ζによる炎症制御機構の理解のためには、その特異的発現誘導機構の解明が必須である。IκB-ζの発現誘導には、NF-κBによる転写の活性化に加え、刺激特異的に誘導される転写後制御機構の活性化が必須である。我々は、この未知の転写後制御機構に必須かつ十分であるIκB-ζ mRNAの3'非翻訳領域に存在する165ヌクレオチドからなるシスエレメントを同定している。今年度は、このエレメントに結合する細胞内因子を検索した。同エレメントにストレプトアビジンアプタマーの配列を付加したRNAをin vitro transcriptionによって作成し、細胞抽出液と混合後、ストレプトアビジン固定化ビースを用いて回収した。RNAをビオチンによってビーズより解離させた後、SDS-PAGEによって結合タンパク質の解析を行った。コントロールと比較し、エレメントに特異的に結合すると考えられるタンパク質のバンドについて、ゲルより切り出し、トリプシン消化後、質量分析によって解析した。ペプチドフィンガーマスプリンティングによって同定したタンパク質について、そのcDNAを単離し、細胞内で強制発現後、各種RNAとの結合について検討した。その結果、165ヌクレオチドに特異的に結合するタンパク質を数種同定することができ、今後、その生理機能の解析を進める予定である。
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