研究概要 |
膜型マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MT1-MMP)は元々MMP-2の活性化因子として同定された。我々は発現クローニング法を開発し、MT1-MMPの新規基質・活性調節因子などを同定する作業を継続して行ってきた。今回、MT1-MMPの新規基質・活性調節因子として機能がいまだ不明の免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパクGI24/SISP-1を同定し、その機能を明らかにした。GI24はMT1-MMPと相互作用することにより細胞膜表面上のMT1-MMPを安定化し、結果としてその活性を亢進した。扁平上皮がんHSC-4細胞ではGI24がMT1-MMPの活性を亢進することにより、HSC-4細胞のコラーゲンゲル内での浸潤性増殖を促進することを明らかにした(Cancer Sci., 2010)。さらにGI24と構造的に相同性が高いKidney Injury Molecule-1 (KIM-1)について検討したところ、KIM-1の膜貫通領域の近傍をMT1-MMPが切断し、細胞外領域をシェディングすることを見出した。KIM-1はフォスファチジルセリンの受容体でありKIM-1のシェディングされたフラグメントはフォスファチジルセリンと結合した。また、KIM-1を細胞表面上に発現する細胞では大腸菌の貪食すが認められた。MT1-MMPによるKIM-1シェディングの生理的意義については、なお検討中である。 一方、MT1-MMP発現細胞の3次元コラーゲンゲル内増殖において、MT1-MMPによる増殖促進、ERKの活性化にはc-SrcおよびPaxillinが関与することを見出し、報告した(B.B.R.C., 2010)。 MT1-MMPとがん幹細胞マーカーであるCD133との相互作用については直接的な結合・切断などは検出されなかったが、引き続き間接的な作用も含めて検討中である。
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