(1)前年度までに、副腎皮質細胞における、アンジオテンシンIII(Ang II)刺激によるアルドステロン合成酵素CYP11B2遺伝子の発現に、カルシニューリン(CN)が介在し、CNがCYP11B2遺伝子プロモーターの制御領域Ad5とAd1への転写因子NR4AとCREBの結合を正に制御していることを示した。今年度はさらにCNの作用点に迫るため、CREBとコアクチベーターの変化をAng II刺激後継時的に調べた。その結果、CREBおよびコアクチベーターがリン酸化以外の翻訳後修飾を受け、その修飾状態がアンジオテンシンの刺激を受けてから1時間後に変化すること、この変化がCN阻害剤であるサイクロスポリンAによりキャンセルされることを見出した。CNは脱リン酸化酵素なのでリン酸化とこの翻訳後修飾との関係、CREBの翻訳後修飾による転写活性への影響を追究中である。 (2)バソプレシン分泌異常(中枢性尿崩症)をきたすマスキュリンKOマウスについて、前年度までに行動異常を解析したので、今年度は加齢変化を追究したが、野生型マウスと比較して明らかな差違は認められなかった。 (3)スルファチド欠損マウスは、野生型マウスと比べて飲水量が多く尿量も多いが、高塩濃度水(1%NaClまたは1%KCl)負荷をかけると一層飲水量と尿量が増加した。糖尿病と尿崩症が疑われたが、血糖値に異常はなく糖尿病は否定された。飲水を制限すると尿量が劇的に減ること、塩水負荷により腎髄質にアクアポリンAQP2の発現が正常に誘導されることから尿崩症も否定的である。以上より、口渇中枢に何らかの過剰刺激が入力されている可能性が考えられた。
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