研究概要 |
本研究課題では、酸化ストレスにより生成する8-nitro-cGMPなどのリガンドとそのセンサー(レセプター)蛋白質の機能制御機構を明らかにし、酸化ストレス適応応答と生体防御の分子基盤を解明することを目的とする。我々は、8-nito-cGMPが蛋白質のS-グアニル化という新規翻訳後修飾を起こすことを見いだし、さらに蛋白質S-グアニル化が酸化ストレス適応応答の重要なシグナル経路のひとつであることをすでに明らかしている。これまでに、酸化ストレスセンサー蛋白質として、Keap1を同定し、さらにKeap1のS-グアニル化によって転写因子Nrf2の核移行促進と、抗酸化酵素群(ヘムオキシゲナーゼ1など)の発現誘導を明らかにした。このKeap1のS-グアニル化について、独自に開発したプロテオミクス法にて、修飾部位を解析した。その結果、システイン434番が優先的にS-グアニル化を受けていることが明らかとなった。これまで親電子物質によるシステイン修飾では、いわゆるHot spotとして、システイン151, 273, 288番が主に報告されていたが、S-グアニル化はそれらとは異なる反応性にて起こっていることが示唆された。さらにKeap1のシステイン434番はNrf2との結合界面に局在しており、Keap1とNrf2との相互作用にS-グアニル化が直接影響している可能性が示唆された。以上の結果、8-nitro-cGMPは、活性酸素・酸化ストレスのシグナル伝達を担う重要なセカンドメッセンジャーであり、そのシグナル活性には、蛋白質S-グアニル化を介したNrf2依存的な抗酸化シグナルの活性化が重要であることが示された。
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