研究概要 |
α1,4結合型N-アセチルグルコサミン含有O-グリカンは胃腺粘液細胞から分泌される糖鎖で、α1,4-N-アセチルグルコサミン転移酵素(α4GnT)によって生合成される。本研究の目的は、SNPデータベース上でα4GnTの酵素活性に影響するα4GnT遺伝子のcoding SNP(cSNP)を探索し、そのcSNPが胃疾患発症の危険因子となり得るか否かを明らかにすることである。平成21年度は胃内視鏡検査で前庭部小彎・大彎、胃角部小彎、胃体中部小彎・大彎、胃体上部大彎より定点生検を行ったピロリ菌感染者56名とピロリ菌非感染者50名を対象に、末梢血有核細胞からゲノムDNAを調整し、2種類のcSNPに対する特異的プローブを用いたTaqMan PCR法により解析した。218番目のAla(GCC)がAsp(GAC)に変異したアレル(dbSNPrs# 2246945)の出現頻度は感染者群でCC:CA:AA=16%:52%:32%、非感染者群でCC:CA:AA=10%:54%:36%と、両者に有意な差は見られなかった。次に感染者群を対象にUpdated Sydney System(USS)に基づき菌量、腺萎縮、単核球浸潤、好中球浸潤、腸上皮化生の程度を評価し、同アレルの発現頻度との相関を解析した。菌量がUSSスコア10以上の高菌量群ではCC:CA:AA=24%:55%:21%、USSスコア9以下の低菌量群ではCC:CA:AA=7%:48%:45%と、両者に有意な差を認めた(P=0.03)。しかし他の因子と有意な相関は見られなかった。一方、282番目のAsn(AAT)がLys(AAG)に変異したアレル(dbSNPrs# 61740810)の出現頻度はピロリ菌感染の有無に関わらず全例がTTであった。以上の結果より、dbSNPrs# 2246945の出現頻度とピロリ菌量は相関することが示された。
|