平成22年度は218番目のAla(GCC)がAsp(GAC)に変異したSNPs(dbSNPrs# 2246945)に注目し、site directed mutagenesisを行いα 4GnT発現プラスミドにこれと同様の塩基置換を加えて変異型のα 4GnTを作成、変異型α 4GnTと野生型α 4GnTでその酵素活性の違いを解析した。変異型α 4GnTは野生型α 4GnTと比較し、その酵素活性が約60%に減少することを見出した。次に、60歳以上で、性別、飲酒歴をマッチングさせたピロリ菌感染胃炎・胃潰瘍患者(胃炎・胃潰瘍群)42名と、内視鏡的治療を施行したピロリ菌陽性の分化型早期胃癌患者(胃癌群)43名の末梢血有核細胞からゲノムDNAを調整し、dbSNPrs# 2246945における遺伝型の頻度をTaqMan PCR法により解析した。胃炎/胃潰瘍患者群ではCC:CA:AA=11.9%:66.7%:21.4%、分化型早期胃癌患者群でCC:CA:AA=7.0%:48.8%:44.2%であり、遺伝型の頻度は両群間で有意な違いは認められなかった(P=0.0796)。次に、各遺伝型の発現頻度をCC vs CA+AAに分けて検討すると、胃炎/胃潰瘍患者群でCC:CA+AA=11.9%:88.1%、分化型早期胃癌患者群でCC:CA+AA=7.0%:93.0%と両者に有意な違いは認められなかったが、CC+CA vs AAに分けて検討すると、胃炎/胃潰瘍患者群でCC+CA:AA=78.6%:21.4%、分化型早期胃癌患者群でCC+CA:AA=55.8%:44.1%とCの遺伝子型は会化型早期胃癌患者群に比較し、胃炎/胃潰瘍患群で有意に高い頻度で認められた(P=0.0256)。以上より、dbSNPrs# 2246945における遺伝子型Cの存在はピロリ菌感染患者の胃癌発症に予防的に働いている可能性が示された。
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