研究概要 |
CAST法によって食道癌、胃癌特異的膜蛋白・分泌蛋白を同定し、このcore-regulationを担うmicroRNA(miRNA)を明らかにすることにより、根幹的な診断・治療開発を目的として、本年度は以下のとおり実施した。 1) CAST法による食道癌・胃癌特異的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の同定 胃癌細胞株2株と正常胃粘膜組織のCASTライブラリーを作成、4320コロニーについてシークエンスを行ない、胃癌細胞株のみで発現している30個の膜蛋白遺伝子を同定した。定量的RT-PCR法での発現検証において、胃癌に特異性の高い6遺伝子(PCDHB9, C4orf34, ADAM17, TMEM50B, ENPP4, SLC38A2)を見いだした。さらに、CD151, RFT1, CLDN7, DSC2なども胃癌で高発現していた。DSC2は、CDX2で発現が制御され、免疫染色では腸型粘液形質を示す28%の胃癌で陽性であった。また、DSC2は食道扁平上皮癌の殆どで陽性を示した。スキルス胃癌を材料にCAST解析を行なっている。 2) 胃癌における網羅的miRNA発現解析 miRNAマイクロアレイを用いて182例の胃癌を解析し、胃癌で発現が亢進している22個のmiRNA(mR-181d, miR-21, miR-93など)、発現が低下している13個のmiRNA(miR-148a, miR-148b, miR-375など)を同定した。また、組織型、進行度と相関するsignatureを見いだし、let-7gやmiR-433の発現低下は独立した予後因子となることを明らかにした。さらに、マイクロアレイと定量的RT-PCR法との相関、ホルマリン固定パラフィン包埋組織における発現についても確認した。いくつかのmiRNAについては、標的遺伝子の同定、機能解析を進めている。
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