研究概要 |
本年度は,CAST法によって消化管癌特異的膜蛋白・分泌蛋白を同定し,その制御を担うmicroRNAを明らかにする目的で以下のとおり実施した。 1)CAST法によるスキルス胃癌特異的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の同定と機能解析 HSC-44PE(スキルス胃癌細胞株)と44As3(HSC-44PE由来高腹膜転移株)についてそれぞれ1152クローンを解析した。両者の比較および正常組織との比較から,HCS-44PEでは,発現レベルの高い順に,MMP10,MMP1,FAM3C,ITGB6,SLC38A2等がリストアップされ,44As3では,発現レベルの高い順に,ITGB6,ZDHHC14,DLG1,FAM3C,MMP1等がリストアップされた。膜蛋白コード遺伝子では,ITGB6,ZDHHC14,DLG1が44As3において発現が特に亢進していた。ZDHHC14について,44As3における高発現を蛍光免疫染色で確認した後に,浸潤,増殖への影響を解析した。 2)胃癌の生物学的態度を制御するmicroRNAの機能・標的解析 各種胃癌細胞株と間質線維芽細胞を用いて,miR-143の発現を解析した。胃癌細胞株9株のmiR-143の低発現は脱メチル化剤で回復し,メチル化による発現抑制と見なされた。間質線維芽細胞ではmiR-143の発現は保たれていた。collagen type III (col-III)の発現は胃癌細胞には殆どなく,間質細胞に発現しており,anti-miR-143により発現がcol-IIIの発現が抑制されることから,間質細胞では,miR-143はcol-IIIを正に制御していることが明らかとなった。同様に,anti-miR-143によりα-SMAの発現も抑制された。一方,miR-143の発現を亢進させた結果,胃癌細胞株ではTGF-βの産生量が低下した。
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