研究課題
Leucine-rich repeat-containing G protein-coupled receptor 5(LGR5/GPR49)の高発現は肝細胞癌、基底細胞癌などいくつかの癌で観察されているが、大腸癌の発生・進展に関しては、これまで詳細な検討は行われていない。本研究ではまず、37の代表的な癌細胞株におけるLGR5 mRNAの発現を調べるためにquantitative RT-PCRを行った。他臓器癌由来の細胞株に比べて、LGR5は高頻度に大腸癌細胞株で高発現していた。さらに、LGR5は原発巣由来のものに比べ、転移巣由来の大腸癌細胞株でより高発現していた。臨床検体における検討では、LGR5は対応する正常粘膜と比較して大腸癌50例中35例で高発現していた。また、大腸腺腫においても7例中7例で高発現していた。このことはLGR5の発現増加が大腸癌発癌の初期段階から起こっていることを示唆している。またLGR5の発現レベルは大腸癌において著明なばらつきを認めており、リンパ管侵襲、静脈侵襲、腫瘍深達度、リンパ節転移、腫瘍病期(IIICvs.IIIB)と有意な相関を認めた。一方、in situハイブリダイゼーションにて発現細胞の詳細な解析を行ったところ、大腸癌高発現症例ならびに腺腫においては、腫瘍内でほぼ均一に腫瘍細胞に高発現を認めた。背景粘膜では、小腸と大腸の陰窩底部の円柱状細胞において特異的にLGR5の発現が認められ、マウスでの報告と同様にヒトにおいても腸管の幹細胞に発現していることが示唆された。以上の結果はLGR5が大腸癌発癌の初期のみならず浸潤転移といった後期においても重要な役割を果たしていることを示唆しており、LGR5は大腸癌の新規予後因子および治療標的としての可能性を有していると考えられた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Biochem Biophys Res Commun. 391
ページ: 486-491
Cancer Sci (in press)