研究課題
平成23年度は以下の項目について研究をおこなった。1.抗GPR49特異抗体の作成:前年度までにGPE49遺伝子全長のタンパク質発現細胞を免疫原としてモノクロナール抗体の作成を行った。しかし、内在性GPR49を検出可能にする力価の特異抗体を作成することができなかった。そこで本年度は新たに第一細胞外ドメインおよび第三細胞外ドメイン含むN-末端タンパクを細胞膜上に発現する細胞を用いて高力価のモノクロナール抗体の作成を試みた。現在GPR49発現細胞や組織を用いて特異的染色性を検討中である。2.GPR49の癌の悪性度進展過程における機能解析:前年度までに、GPR49高発現細胞では細胞同士の接着が密になり凝集性を獲得し、コロニー形成率が増加し、細胞死に対し抵抗性となり、細胞運動能が減少することを明らかにした。今年度はGPR49高発現細胞を重度免疫不全マウスNOD/SCID/IL2へ移植し腫瘍形成能、転移能、および組織型の変化を検討した。組織学的には、GPR49非発現細胞は肝内接種後に瀰漫性の腫瘍を形成するのに対し、GPR49高発現細胞の腫瘍は索状構造を示し、血洞間質の形成がみとめられた。また、GPR49非発現細胞の腫瘤からはしばしば隣接する組織への浸潤がみとめられたが、GPR49高発現細胞の腫瘤から浸潤は稀であった。さらに、GPR49高発現細胞は非発現細胞に比して肝内転移が抑制されていた。これらの結果は、ヒト肝細胞癌において、GPR49高発現群で索状構造を示す高分化型が多い傾向にあること、また、GPR49高発現群で肝内転移が少ない傾向にあることなどと良く相関していた。これらの結果からヒト肝癌組織における結節形成や索状配列、あるいは肝癌の薬剤治療の抵抗性など肝癌に特徴的な形態がGPR49の高発現によることが一因となっている可能性が高いことが示された。
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Oncology
巻: 80 ページ: 406-415