「癌の発生母地のテロメアは非担癌正常組織より短い」という仮説を多臓器・組織で証明し、さらに、癌の発生母地におけるテロメア短縮(テロメア機能不全を惹起)による染色体の不安定性(発癌の入り口)の存在を証明するために組織FISH法によるテロメア長解析、サザンブロット法によるテロメア長測定、Q-FISH法による分裂中期細胞のテロメア長測定を行ないました。 平成21年度は、FISH法によるテロメア長解析において標準化のために用いるTIG-1培養線維芽細胞のセルブロックを作製しました。(a)Barrett食道粘膜(b)食道粘膜(c)胃粘膜(d)皮膚(e)早老症組織(f)肝臓(g)副甲状腺(h)甲状腺(i)大腸の対象となる病変組織を収集、また対照群となる正常組織を収集し、FISH法によるテロメア解析を開始しています。従来通りのサザンブロット法によるテロメア長の測定も行なっています。また、食道上皮についてはQ-FISH法による分裂中期細胞のテロメア長測定および染色体の不安定性指標の検討も行ないました。 以上の結果、Barrett食道と食道扁平上皮についてはテロメア解析および染色体不安定性の検討が終了し、癌の発生母地のテロメアは非担癌正常組織より短いという仮説と、癌の発生母地におけるテロメア短縮による染色体不安定性を証明しました。食道上皮については英文論文を投稿し、採択となりました(研究発表の項を参照下さい)。皮膚、副甲状腺、大腸についても、検討が進行しています。 これらの結果の一部については日本病理学会、日本癌学会において発表し食道については英語論文の発表を行ないました。
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