研究課題/領域番号 |
21390110
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
谷田部 恭 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 研究員 (90280809)
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研究分担者 |
光冨 徹哉 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 研究員 (70209807)
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キーワード | 肺癌 / 遺伝子変異 / 上皮増殖因子受容体 / 腺癌 / 生物学的腫瘍分類 / 腫瘍内多様性 / KRAS遺伝子 / ALK遺伝子 |
研究概要 |
前癌病変、上皮内病変の検討:本年度は分子生物学的な検討もさることながら、病理組織学的な検討を主に行った。従来より参画している学際的な新腺癌分類について精力を注ぎ、分類内に上皮内腺癌、微小浸潤腺癌等の項目を盛り込まれた。これまでは細気管支肺胞上皮癌が上皮内癌に相当する腫瘍名であったが、細胞学的な特徴を冠した名前であったため、数々の混乱が生じた。新分類では、明確で共通の定義により、より正確な生物学的な動態を推測することができると期待される。新旧の分類を比較し、その頻度や問題点などについて検討を進めつつある。 組織内遺伝子異常の多様性:これまでEGFR遺伝子変異が腫瘍内で多様性を示すことがあると報告されてきた。しかしながら、昨年度に報告したEGFR遺伝子増幅がその変異に関連して獲得されることにより、その多様性が増幅に伴う見かけ上の現象であることを報告した。このことは、肺癌の第一治療選択薬を決定する上で極めて重要な知見であり、また、治療戦略を考える上でも深い示唆を与える。また、近年EGFR変異特異的抗体が開発され、それを用いた検討も開始し、パイロット的な検討結果も出ている。一般にEGFRタンパクの発現はEGFR遺伝子量と関連するが、遺伝子変異の有無とは関係がない。変異EGFRタンパクの発現はTotal EGFR発現量とよく相関し、変異の有無に関係なく、遺伝子量と関係することがわかりつつある。多数例での検討やその特異性を検討し、この抗体が臨床の現場で役に立つか検討をさらに進めたい。 分子病理学的鑑別診断への応用:治療と関係が示唆されているEGFR、HER2、BRAF遺伝子変異に加え、肺癌でALK遺伝子の関与が近年報告された。ALK遺伝子の転座は1990年代にリンパ腫で見いだされていたため、分子標的薬が既に開発されている。そこで、ALK遺伝子について検討を進めている。これまでこの遺伝子には転座、遺伝子増幅、遺伝子変異が報告されているが、これを包括的な検討を進めている。
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