研究課題
本年度はJCウイルス(JCV)がコードする早期タンパク質であるT抗原(TAg)、および後期タンパク質であるVP1に着眼して研究を推進した。JCV感染細胞において、TAgの非特異的なDNA結合性が細胞周期に与える影響を検討するため、DNA結合性が低下もしくは増強するTAgの変異体を作成した。次に、これらの変異体を細胞に導入・発現させて細胞周期を解析した。野生型TAgを発現した細胞はG2/M期の細胞が増加していたが、DNA結合性が低下したTAg変異体を発現した細胞はG2/M期への細胞の集積は認められなかった。また、DNA結合性が増強しているTAg変異体を発現した細胞ではG2/M期に集積する細胞数が野生型よりさらに増加していた。本研究により、TAg発現による細胞周期のG2期停止の機構において、TAgが宿主細胞のDNAへ結合することが関与していることが明らかになった。また、JCV感染細胞でTAgの発現によって誘導されるG2期停止は効率的なウイルスDNAの複製に必須であることが判明した。次に、外郭タンパク質であるVP1内に6個存在するシステイン残基の変異体を作成して、JCVの粒子形成能を比較・検討した。本実験により、VP1タンパク質が互いに結合し5量体を形成すること、5量体の形成過程においてシステイン残基が必須であること、5量体の形成に続いて粒子形成が起こることが明らかになった。これまでJCVの粒子形成の機序は不明であったが、VP1により形成される5量体が粒子形成において重要であることが判明した。本研究により、JCV感染抑制法を開発するための重要な基礎的知見が得られた。その他、JCVのウイルス様粒子を利用したdrug delivery systemの研究にも行った。
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