研究課題
NKG2Dはナチュラルキラー細胞(NK細胞)、CD8+T細胞(キラーT細胞)、γ/δT、細胞に発現される活性化レセプターである。本レセプターに対するリガンド(以下、NKG2Dリガンド)は正常細胞には発現していないが、がん化、ウイルス感染、創傷などのストレスによって発現が誘導される。NKG2Dにリガンドが結合すると、NK細胞、CD8+T細胞等は活性化され、がん細胞、ウイルス感染細胞を破壊する。本研究では、当研究室において発見されたマウスのNKG2DリガンドであるH60c(histocompatibility-60c)に焦点を当てて解析した。皮膚に損傷を与えると、数時間で表皮ケラチノサイト細胞膜にH60c分子の発現が誘導され、それがdendritic epidermal T cellとして知られる表皮常在γ/δT細胞の活性化をもたらすことが明らかになった。また、H60cとNKG2Dとの結合を阻害するH60c特異的モノクロナル抗体を創傷部位に投与すると、創傷治癒が有意に遅延することが明らかになった。他のNKG2Dリガンドとは異なり、H60cの発現は皮膚、女性生殖器粘膜等の体表面に限局している。したがって、H60cは皮膚粘膜等の体表面の異常を免疫系に知らせることに特化したNKG2Dリガンドであることが示唆された。過去の報告では、H60cとNKG2Dとの結合親和性は他のリガンドより弱いとされていたが、これは測定に使用したH60cが二量体を形成していたためであり、本来の構造である単量体H60cのNKG2Dへの結合親和性は高親和性リガンドに匹敵するものであることが判明した。
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