研究概要 |
Type II collagenに対する抗体とLPS投与によりT細胞非依存性に関節炎を惹起するCAIAモデルにおいて、オステオポンチン(OPN)やテナーシンC(TNC),およびその受容体であるα9インテグリン(以後α9)の機能を検討した。CAIAモデルで、病巣から関節炎が認められる9日目に滑膜マクロファージ(SMΦ)と滑膜線維芽細胞(FLS)を分離した。これらの細胞群はα9を発現しているので、そのリガンドであるOPN及びTNCにてin vitroで刺激した。FLSにおいては、IL-6,IL-1,CCL2,CXCL5,CXCL12,MMP9の発現増強が見られた。一方、SMΦにおいては、IL-1,IL-6,TNF,CCL2,CCL3,CCL4,CXCL2,CXCL5の発現増強が見られた。病巣から分離した未刺激のSMΦでは、TGF-β見られたが、FLSにおいては認められなかった。強調すべきは、α9依存性のシグナルによりFLSとSMΦに共通して発現上昇する分子と、それぞれの細胞特異的に発現上昇する分子が存在することである。 また、関節リウマチでは、滑膜組織の増生が著明であるにもかかわらず、滑膜細胞増殖の所見は明確ではない。我々はanoikis(detachment-induced cell death)に注目した。これは、関節リウマチ患者の関節液中には、滑膜由来FLSが多数浮遊しているからである。通常では浮遊細胞は、細胞死に陥るが、関節液中で上昇する事が報告されているトロンビン切断型OPNをmimicして、そのcryptic epitopeであるSVVYGLR peptideを浮遊FLSに加えるとanoikisが抑制された。この抑制は、α9に対する阻害抗体を加えることでキャンセルされるため、α9依存性のanoikis抑制であることが明らかになった。これが、滑膜増生の1つのメカニズムと考える。
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