TMEPAIについては、ノックアウトマウスとApc^<Min/+>マウスを交配して、消化管腫瘍の形成に対するTMEPAIの作用に関する検討を続けている。また、TMEPAIのファミリー分子であるC18orf1の機能解析とノックアウトマウスの作成を行った。C18orf1はTMEPAIと同様の機能を持ち、mRNAレベルでは多くの臓器で恒常的に発現していることが示された。また、TMEPAIのモノクローナル抗体の作成とELISAシステムの立ち上げを行ったが、血清が加わると検出感度が極端に低下するという問題が発生し、現在、さらに検討を続けている。 THG-1については、EGF-RAS-MAPK経路の下流でリン酸化される部位を同定し、リン酸化されない変異体では、Stemnessの特徴とされるsphere形成促進能が低下することを示した。また、リン酸化THG-1を認識するモノクローナル抗体を作成した。食道がんのみならず子宮頚がんでも扁平上皮がんであれば、ほとんどの症例(9割以上)でTHG-1の発現亢進が見られた。また、子宮頚がんでも食道がんで発見されたものと同じ点変異をもつ症例があり、この変異体の機能についても解析を進めている。 Villinプロモーターを消化管粘膜にTGF-βを恒常的に発現するトランスジェニックマウスの作成を試みたが、TGF-βの発現を向上させると個体が得られなくなることから、消化管粘膜におけるTGF-βの恒常的な発現は致死となると判断された。また、TGF-βの標的遺伝子であることを見いだしたMafKの恒常的な発現によりヒト乳腺上皮細胞であるMNuMG細胞が腫瘍化することが見いだされた。複数の細胞で検討するとともに、MafKを介するTGF-βの作用も腫瘍化に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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