研究課題
炎症反応で誘導するCOX-2/PGE_2経路は、発がんに重要な役割を果たしている。本研究では、胃がん発生における、COX-2/PGE_2経路の役割を明らかにすることを目的として研究を行なった。すなわち、Wnt活性化とCOX-2/PGE_2経路の相互作用により胃がんを発生するGanマウスを用いた解析と、TGF-β経路遮断とCOX-2/PGE_2経路の相互作用による胃がんモデルの開発を平行して行なった。TGF-βII型受容体遺伝子Tgfbr2を胃粘膜特異的に欠損するマウス作製のため、本研究においてK19-CreERマウスを複数系統作製して解析を実施したが、全ての系統でCreERの発現効率が極めて低く、複合マウスでの胃粘膜上皮でTgfbr2遺伝子は欠損しなかった。そこで、全身でCreERを発現するROSA26CreERマウスを導入して、ROSA26CreER/Tgfbr2(flox/flox)マウスを作製した。本研究は今年度で終了するが、このマウスモデルは、TGF-β遮断による胃がん発生での、COX-2/PGE_2経路の役割について研究を進めるための重要な研究材料となる。一方、Ganマウスの解析により、胃がん組織では炎症反応依存的にmicroRNA発現が変化することを明らかにした。とくに、がん遺伝子として作用するmiR-21、miR-155の発現が上昇し、がん抑制遺伝子であるmiR-7やmiR-143の発現が低下していた。miR-7について詳細に解析した結果、正常上皮が分化する過程で発現誘導が認められ、ヒト胃がん組織ではTNF-αの発現量と逆比例して発現抑制されていた。また、胃がん細胞にmiR-7を導入すると軟寒天コロニー形成が有意に減少した。したがって、COX-2/PGE_2依存的な炎症により、miR-7発現が低下し、それにより胃上皮細胞の分化が抑制され、発がんが促進すると考えられた。
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