最近、我々は、IL-6信号伝達分子gp130の点変異を導入したノックインマウス:F759において自己免疫性の慢性炎症誘導にSTAT3とNFkBが異常に活性化し、IL-6等のサイトカインを大量に産生している異常な線維芽細胞が重要である事を証明した。本研究の目的は、その線維芽細胞集団が、自立増職能を持つ"炎症ストローマ"と呼ぶべき細胞集団であることを証明し、その発生機序を分子生物学的に詳細に明らかとすること、さらに、いくつかの慢性炎症モデルを用いてその機能を詳細に検討して、炎症ストローマを用いて癌治療、ワクチン開発の効率化をはかる可能性をも示す事である。 1. NFkBとSTAT3の活性化に伴う培養線維芽細胞の増殖能、付遊走能の解析CA-IKKb/CA-STAT3-MEF細胞にて、IL-6等の炎症性サイトカインの発現が有意に上昇している事に加えて、MTTアッセイにて測定した増殖およびCFSE標識の減少を指標とした細胞分裂も有意に増加していた。現在、軟寒天培地中にてMEF細胞のコロニー数がCA-IKKb/CA-STAT3導入後増加することが判明した。CA-IKKb/CA-STAT3-MEF細胞は活性化マクロファージおよび好中球を引きつける活性を持つ事が判った。現在、コントロールMEF細胞と比較したDNAアレー、LCMS法を行ってデータ解析中である。 2. 自己免疫性慢性炎症モデルでの炎症ストローマの性質の解析F759マウス関節炎を用いて自己免疫性慢性炎症肩所でのSTAT3とNFkBが活性化している炎症ストローマの活性化、増加を表面マーカー、サイトカインの発現を指標に生体内にて解析している。免疫組織化学にて興味深い知見が得られている。 3. 新たな慢性炎症モデルでの炎症的とローマの性質の解析 炎症ストローマ解析に用いる事のできる可能性の有る薪たな慢性炎症モデル(動脈硬化、膵島炎、肝炎モデル)系の構築を試みた。現時点では薬物誘導性の慢性疾患モデルではIL-6シグナルで大きく症状が変化するモデルは作製できていない。現在、NODマウスおよびRip-OVAマウスとOT1、OT2細胞の系の作製を急いでいる。
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