胸腺T細胞分化におけるNotchリガンドの役割 これまでの研究から、T細胞分化環境としての胸腺の分子的本態は、Notchリガンド(NotchL) : Delta-like 4(Dll4)であることを明らかにした。本年度は、Gain-of-function、Loss-of-functionシステム両者を駆使し、Dll4欠失条件下でのDll分子の機能を調べるため、FoxN1-Cre、Dll4-floxed、CAG-floxed[CAT]-Dll4あるいはDll1(Cre依存的にDll4遺伝子欠失を誘導すると同時に、Dll4あるいはDll1を発現)マウスをそれぞれ作製した。前者では、胸腺分化の完全な回復を認め、システムが適切に機能していることが証明された。これに対し、Dll1を発現した後者のマウスでは、新生仔期でまったくT細胞は分化せず、また多くのB細胞が出現し、Dll1はDll4の機能をまったく代替しなかった。これまでのin vitro分化系を用いた解析からは、両Dll分子間の機能的差異は認められず、本来の胸腺環境を用いた解析系はきわめて有用なことが確認された。今後は、in vivoモデル系を用いて、両分子の機能的差異を、分子レベルで明らかにする必要がある。我々のグループでは、すでにこうした解析をより迅速に行うべく、遺伝子改変ES細胞をヌードマウス胚盤胞へ導入し、ES細胞由来の胸腺上皮細胞にて機能解析を行う系(nude mouse blastcyst complementation)を作製した。次年度以降、こうした解析系を用いて、Dll分子のin vivoにおける機能発現の分子機構をより詳細に探索する。
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