(1)胎児大腸神経系の初代培養細胞を用いた細胞死経路の探索で、前年度の結果から、1.腸管神経細胞死を誘導する上流経路は、交感神経細胞をはじめとする多くの神経細胞のapoptosisの誘導経路と非常に類似していること、2.腸管神経では細胞死経路下流に位置するカスパーゼ3活性化経路が欠落している可能性、が示唆されていた。今年度、これらについて検討した結果、GDNF除去後、cytochrome cの明らかな放出が起こらないこと、陽管神経系ではApaf-1の発現自体が低く、細胞死の過程での上昇も認めないことが明らかとなった。また、カスパーゼ6の阻害剤による細胞死抑制の可能性を解析したが、明らかな抑制効果は認められなかった。以上の結果は、腸管神経は細胞死に過程で特異な誘導シグナルおよび細胞死執行シグナルを駆動していることを明らかにしたが、その分子実態はまだ捉えられていない。現在の培養システムでは大規模な生化学的解析をするために十分な細胞数を確保することが困難であり、今後システムに更なる改良を加える必要がある。 チロシンキナーゼ受容体RETの発現低下は大腸神経のカスパーゼ非依存性細胞死を誘発し、ヒルシュスプルング病様の病態を誘導する。ヒルシュスプルング病の患者に同定されたRET C618Y変異のヒルシュスプルング病態誘導能について検討した。RET C618YをRET遺伝子座に挿入したノックインマウスにでは、大腸特異的に神経欠如が起こった。このマウスの腸管神経発生過程で、大腸神経系特異的にカスパーゼ非依存性の細胞死が起こっているか解析中である。
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