本研究は抑制性レセプターLy49Qによる新しい自然免疫応答制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度はLy49Qノックアウトマウス由来自然免疫細胞およびLy49Qトランスフェクタントを用いて、シグナル伝達の足場として重要な脂質ラフトの生化学的解析を行い、Ly49Qが自然免疫細胞のラフトの構築とラフトへのシグナル分子の動員に重要な役割を果たすことを見出した。ショ糖密度勾配遠心法によってラフト画分を濃縮し、種々のシグナル分子の会合をウエスタンブロット法で解析した結果、Ly49Q欠損細胞ではSrcの恒常的なラフトへの局在が認められ、刺激依存的なSrcのラフトへの動員は認められなかったのに対し、Ly49Q発現細胞では、刺激非存在下ではSrcはラフト画分に認められず、刺激に依存してラフトへ動員されることが明らかとなった。これらの結果から、Ly49Qはラフトの構築を制御し、刺激依存的にラフトへSrcを動員することによってその後のエンドサイトーシスおよびエンドライソゾームを介したTLR9シグナルを正に制御している可能性が示唆された。さらにLy49QによるTLR9制御がプラスマ樹状細胞の機能発現に果たす役割について解析を進め、CpG刺激下におけるプラスマ樹状細胞の生存にLy49Qが重要な役割を果たすことを見出し、Ly49Q欠損プラスマ樹状細胞における細胞死の誘導機構について解析を進めている。また、Ly49Qに会合するフォスファターゼの機能を明らかにするために、SHP-1およびSHP-2のフォスファターゼ欠損変異体、SH2ドメイン欠損変異体、リン酸化部位変異体を、レンチウイルスベクターを用いてRAW264細胞に発現させ、形質転換株を樹立した。現在これらの形質転換株を用いてTLR9シグナルを解析し、TLR9シグナル制御に重要な領域の同定を進めている。
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