マラリア感染マウスのCD4^+T細胞は、T細胞受容体(TCR)刺激に対してIFN-γ産生亢進、IL-2産生低下を示す。本研究では、このサイトカイン産生の調節機構、特にIL-2産生抑制機構の分子基盤の解明を目指している。研究の一年目に当たり、IL-2産生抑制因子の同定についてはアレイ解析や蛋白精製を試みているが未だに到達できていない。しかしながら、IFN-γ産生亢進とIL-2との関連について新たな知見を得ることが出来た。 卵白アルブミン(OVA)特異的TCRトランスジェニックマウスOT-IIのCD4^T細胞を受け身移入したマウスにマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株を感染させ、精製したCD4^+T細胞をOVAで刺激したところ、高いレベルのIFN-γ産生が得られた。しかしながら産生細胞OT-IIではなく、宿主のCD4^+T細胞であった。この実験を契機に、OVAにより活性化されたOT-II細胞がIL-2を産生し、それが活性化宿主CD4^+T細胞のIL-2受容体に結合してIFN-γ産生を促進することが明らかになった。即ち、感染マウスCD4^+T細胞はIL-2受容体を発現しており、自身のTCR刺激がなくても他の細胞が産生するIL-2により傍観者的にIFN-γを産生することができる。さらに、マラリア抗原に対するT細胞反応の際に抗IL-2受容体抗体を添加しておくとIFN-γ産生が抑制されることから、マラリア抗原に対するCD4^+T細胞のIFN-γ産生はIL-2に依存的であることが明らかになった。このことは、マラリア感染においてIL-2発現レベルが他のサイトカイン産生にも調節的に機能していることを示している。従ってIL-2産生調節機序の解明は極めて重要である。
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