研究課題
マラリアは世界的に極めて重要な感染症であるが、その病態や宿主の免疫応答機序については十分に解明されていない。ワクチン開発のためにはこれら基礎的な理解が不可欠である。我々は、マラリア感染マウス実験モデルにおいてCD4^+T細胞の抗原刺激に対する応答は通常のT細胞とは異なり、IL-2産生は低下し、IFN-γ、IL-4やIL-10産生は亢進していることを明らかにした。さらにこの機序を解明する目的で、モデル抗原OVAを発現するマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA (PbA-OVA)を作製し、OVA特異的T細胞の応答を解析した。その結果、意外なことにPbA-OVA感染マウスでOVA刺激に対し高いIFN-γ産生を示すのはOVA特異的T細胞ではなく、むしろ他のCD4^+T細胞であることが明らかになった。さらに詳細な解析から、マラリア感染マウスでは、感染により活性化されIL-2受容体を発現するCD4^+T細胞は、抗原非存在下IL-2刺激だけでもIFN-γ産生を誘導されることが明らかになった。一般にCD4^+T細胞は抗原刺激を受けてIFN-γ産生を行うと考えられており、IL-2のみでIFN-γ産生を行うことは新規の重要な知見である。さらに、抗原刺激に対するIFN-γ産生についても、抗IL-2受容体抗体で完全に抑制されることから、IL-2依存的であることが明らかになった。どのような場合にIL-2依存性のIFN-γ産生を行うのか、どのような場合に非依存的な産生を行うのか、現在メカニズムの解明へと進んでいる。またCD4^+T細胞のIL-2産生抑制は、以上にように主要な抗炎症生サイトカインIFN-γ産生とも密接に関連しており、本研究の目的であるIL-2産生抑制機構の解明と共に、宿主サイトカインネットワークの制御機構がマラリア感染に伴いどのような修飾を受けるのか、全体像の解明に向けて今後とも研究を推進する。
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Nature Immunology
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http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/mmi/im/