研究概要 |
百日咳菌(Bordetella pertussis)に代表されるボルデテラ属細菌は,III型分泌装置を介して宿主細胞内に移行するエフェクターが病原性発揮に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。申請者らはこれまでに,BopC, BopNエフェクターの機能解析を行い,これらエフェクターは宿主免疫応答からの回避に関与していることを明らかにしている(BopCについては未発表データ)。III型分泌装置によって細胞内に移行するエフェクターは,他菌種では数十種以上存在することが報告され,ボルデテラ属細菌でも未同定のエフェクターが存在することが示唆されている。 本研究ではHybrid LC/MS/MS Systemとisobaricペプチドによるラベル化システム(iTRAQ)を利用し,気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)のIII型分泌装置に依存した新規エフェクターならびに新規分泌タンパク質(III型分泌装置に依存しない)の同定を行った。その結果,約20種のタンパク質がIII型分泌装置依存的に分泌されていることが強く示唆された。また,上記手法にて,III型分泌タンパク質として既に報告されているBsp22, BopB, BopC, BopD, BopNが同定されたことからち本手法がエフェクター探索に有効であることを確認した。エフェクター候補についてはTEM-1融合タンパク質を利用した実験により,分子量25kDaの分泌タンパク質(p25エフェター)が細胞内に移行することを明らかにした。また,p25-FLAGタグ融合タンパク質を細胞内で過剰産生後,抗FLAG抗体による免疫沈降を行い,質量分析にてp25と相互作用する宿主側因子を解析した結果,hnRNPHを同定した。蛍光顕微鏡を用いた局在解析により,p25とhnRNPHは共に核に局在していることを明らかにした。今後は同様な手法にて他のエフェクター候補の解析を行なうとともに,同定された新規エフェクターの宿主内における機能を明らかにする予定である。
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