研究課題
HIV粒子の細胞外への遊離を抑制する抗ウイルス因子として2008年に報告されたテザリン蛋白の機能発現機序の解析と、このテザリン作用を阻止することによりHIVの産生を促進するHIV-1のアクセサリ蛋白であるVpuについて、これらの相互作用、ならびに、抗ウイルスとその拮抗作用の相関性について解析を行った。その結果、テザリン蛋白の抗ウイルス作用は鳥類を含むほとんどすべてのヒト以外の細胞でも再現できることから、テザリンは直接ウイルス粒子に作用していることを強く示唆する結果を得た。次に、Vpuとテザリンそれぞれに付加したN末とC末の蛍光ペプチドフラグメントを生細胞で発現させるbi-molecular fluorescent complementation(BiFC)法を改良し、Vpu/テザリン複合体定量法を確立した。種々の変異体解析の結果、Vpuとテザリンはそれぞれの膜貫通領域を介して結合していること、さらに、結合に必須の3つのアミノ酸を同定するとともに、この結合を減弱化させた変異体ではVpuの抗テザリン作用に反応しないことがわかった。さらに、Vpuに反応しないサルのテザリンでは、これらの3つのアミノ酸配列は保存されているがVpuに対する結合能はないこと、一方、サルのテザリンにヒトのそれと同じように膜貫通領域のN端側に2アミノ酸の挿入を加えると結合能は増加し、さらにC端側の1アミノ酸の置換によりVpuに対する感受性を賦与することができることを見出した。これらの結果は、今後のVpu阻害剤開発のための基礎的知見となる。
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