研究課題
エンベロープウイルスの粒子には、細胞膜由来の脂質二重膜にウイルス由来のEnv蛋白質と細胞由来の因子が共存し、複合体として存在する。そして、これらの形成は細胞内の種々の分子により制御されている。まず、HIV-1 Envの取り込みを促進する因子として報告されたTip47蛋白質について申請者が再現実験を試みたが、その介在の可能性は証明できなかった。そこで本年度の実験は、ウイルス粒子内に取り込まれて、細胞からのウイルス粒子の遊離を抑制する細胞性膜蛋白質BST-2の解析を中心にすえた。BST-2のウイルス放出抑制は、HIV-1のアクセサリー蛋白質のひとつであるVpuにより解除されるが、そのVpuの作用機序は明らかになっていない。申請者はBST-2とVpuが複合体形成を形成することを、分子間相互作用を生細胞で検出できるbi-molecular fluorescent complementation法を用いて明らかにした。さらに、ヒトBST-2、および、Vpuと複合体を形成しないマウスBST-2を使って、マウスとヒトのキメラBST-2を作製し、ヒトBST-2との分子間相互作用部位がその膜貫通部にあることを見いだした。次に、種々のBST-2変異体を用いた実験からVpuとの結合に関わるアミノ酸部位として、I34、L37およびL41がそれぞれ必須なアミノ酸残基であることがわかった。興味あることに、これらの残基はVpuに拮抗されないサル種のBST2膜貫通部に広く保存されていたが、その上流部の2アミノ酸欠損によりVpuとの結合能が消失することがわかった。これらのヒトBST-2の1アミノ酸変異体は、いずれもVpuによるウイルス放出促進作用(すなわち、BST-2拮抗作用)に対して反応性を消失することから、I34、L37およびL41残基は機能的にも重要であることがわかった。
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http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/KoyanagiHP/rekucha/2011_Annual_report.html