研究課題
前年度に確立した、BST2とそれに拮抗するVpuとの生細胞における相互作用定量法により、種々のBST2変異体の結合能を検討した。その結果、相互作用に必須のドメインは膜貫通(TM)領域内のヘリックス片側面の3つのアミノ酸に集積すること、VpuもTM領域を介してBST-2と結合すること、一方、BST2は動物種ごとにアミノ酸配列に差異がありHIV-1が特異的に有するVpuに耐性のアカゲザルやアフリカミドリザルなどの多くのサル種のBST2には同じアミノ酸が保存されているが、その上流の2個のアミノ酸の欠失がVpuとの結合性に明らかに影響を与えることがわかった。これらの1アミノ酸毎のBST2変異体の実験結果をもとに国立感染症研究所の佐藤裕徳博士との共同研究で分子動力学計算解析を行い、BST2のTM領域の構造予測を行った。その結果、ヒトBST2とアフリカミドリザルのBST2には明らかな分子構造の差異があり、特に上記134、L37およびL41の3アミノ酸が同じ面に配位しないこと、さらにその下流のT45部位がVpuに対する結合ドメイン部位であることがわかった。これらの結果から、ヒトBST2ではT45(アフリカミドリザルではI45)とその周辺構造が、I34、L37およびL41の3つのアミノ酸に加え、Vpuへの感受性決定に重要なことがわかった。これらのことは、ヒトならびにサル種ごとに異なるBSTが太古のウイルス感染とともに敵対的共進化した細胞性因子であることを強く示唆する。BST2とVpuの進化的相互性については、いまだ多くのなぞがある。他に、細胞内のシグナル制御を司るRhoGTPaseの活性化抑制分子であるARHGDIB/D4GDIがHIV感染を抑制することを見いだした。
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