C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると高率に慢性化し、慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓癌を引き起こす。ようやく培養細胞で複製可能なHCVの実験室株が確立されたが、HCV研究の最大の問題点は、患者の体内に存在するウイルスを人為的な馴化過程を経ずに、直接分離できる培養細胞系が無い点である。本研究では、レポーター遺伝子の発現を指標に、HCVの感染を高感度に検出可能な指示細胞株の樹立を試みた。ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとして持つ指示細胞株は、実験室株の複製を定量的に検出可能であった。この指示細胞株を用いて、約1300種類の化合物をスクリーニングし、数種類の抗HCV活性を示す化合物を同定できた。また、細胞表面マーカー遺伝子を発現する指示細胞株では、実験室株に感染した細胞だけを単離することが可能であった。本研究で樹立した指示細胞株は、HCVの感染を高感度かつ定量的に検出できることから、抗HCV薬のハイスループットスクリーニングだけでなく、患者血清中に存在するHCVの野生株を人為的な馴化過程を経ずに分離可能な、培養系の確立にも応用できるものと思われる。
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