研究課題
HIV-1の宿主域は極めて狭く、ヒトとチンパンジーにしか感染・増殖せず、ヒトにのみエイズを発症させる。本研究は、HIV-1の個体・集団内における変異、適応、進化の評価系を構築し、ウイルス・宿主攻防戦を実験的に解析することを目指している。前年度までにプロトタイプ・マカクザル指向性HIV-1(HIV-1mt)であるNL-DT5R(X4ウイルス)に様々な改変を加え、サル細胞での増殖効率が飛躍的に向上したMN4Rh-3(X4ウイルス)およびMN5Rh-3(R5ウイルス)の作出に成功していた。本年度は、本研究の目標(HIV-1の個体内における変異、適応、進化の評価系の構築)に向け、gag-CA領域とvpu遺伝子の改変に取組んだ。また、HIV-1mtの増殖適応変異についても系統的に解析した。本年度の主な成果は以下の如くである。(1)MN4Rh-3およびMN5Rh-3のGag-CAを改変(3アミノ酸置換)することにより、カニクイザルやアカゲザルのTRIM5αの抑制を回避するクローン(MN4/LSDQおよびMN5/LSDQ)の構築に成功した。(2)HIVの祖先にあたるSIVの情報を基に、サルTetherinの抑制を回避するクローン(MN4/LSDQgtuおよびMN5/LSDQgtu)の構築に成功した。(3)HIV-1mtの増殖適応変異(Pol-IN領域)の解析から、同義置換によるウイルス蛋白質の発現増強効果という新しくかつ極めて重要な知見を得た。(4)HIV-1mtの増殖適応変異はEnv-SU内の様々な領域に起こっていることが明らかになった。本年度の成果により、HIV-1個体実験系確立に向けての展望が開けた。また、ウイルスの増殖適応変異の研究から、新しい方向性が示された。
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