研究課題
細胞に感染しプロウイルスDNAとなったHIVからの転写はクロマチン構造によって抑制されている。そこで、まず当該年度の研究ではクロマチン構造の基盤を担っているヒストンの生化学的修飾状況を検討した。転写活性を抑制するクロマチン構造はこれを構成するヒストン蛋白の「脱アセチル化」が担っている。また、歯周病菌が低酸素下で産生する酪酸は脱アセチル化を触媒する酵素HDACを抑制する。そこで、実際に歯周病菌の培養上清をHIV潜伏感染細胞に加えたところ、潜伏感染していたHIVの著明な複製が誘導された(Imai et al., J. Immunol. 2009)。また、合成HDAC阻害剤を用いても同様の結果が得られ、別の論文(revise中)ではその標的となる転写因子をHIVプロモーター中で明らかにした。他方、Tat阻害剤の開発は現在も継続して進めているところである、この時点では実験結果をもとに大学帰属特許(特願2009-254740)を出願している段階である。平成21年度でこのプロジェクトで論文を発表したのは、Tatによる転写活性化誘導作用に必要なサイクリンT1とTatとの結合を抑制すると細胞内でのTatの蛋白質としての安定性が極めて不安定化するという成績である。これによってTat阻害のための分子標的がサイクリンT1とTatとの結合を阻害する化合物により限定されたことになる。これ以外にはTatと同様にHIV転写誘導に大きな効果を及ぼすNF-κBの活性化を阻害する化合物について数報の原著論文を報告した。
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