研究課題
マウスAPOBEC3遺伝子には機能的多型があり、レトロウイルス感染に抵抗性の系統では、感受性の系統に較べて造血系組織での遺伝子発現量が高く、その転写産物は第5エキソンを欠くものが主体を占める。これに対し、感受性系統で検出される発現産物は大半が全長型である。我々は昨年度までに、AP0BEC3遺伝子多型がmRNA発現量だけでなく、タンパク質発現量にも大きく影響することを明らかにした。これは、第5エキソンの有無が、タンパク質翻訳効率に影響するためである。そこで今年度は、第5エキソンの有無を決める分子機構と、その進化論的意義の解明に焦点を絞った。試験管内スプライシング実験により、以前からスプライシング効率に影響すると予測されていた第4イントロンRNA分岐部位多型の影響は小さいこと、従来知られていなかった第5エキソン内部から第5イントロン上流部の少数の塩基配列多型が、スプライシング制御に重要な役割を果たすことを明らかにした。次いで、ゲノムクローンの断片化と標的配列変異誘導を行い、第5エキソン内の一つの単一塩基多型が、このエキソンのスプライシング効率に決定的な役割を果たすことを解明した。同定した単一塩基多型は、第5イントロン全体を含むゲノムクローンにおいても、初期転写産物のスプライシング効率を決定した。見出したスプライシング制御部位多型の進化論的意義を、超歯類の複数種と野生マウスのゲノムクローニング、及びcDNA解析により検討した。謁歯類の祖先は第5エキソンを欠くタンパク質高発現型のAPOBEC3遺伝子を持っていたこと、ハツカネズミの祖先の一部で、第2イントロンに内在性レトロウイルス挿入が起こり転写効率が増加したこと、一方イエネズミの祖先の一部では第5エキソンを含むようになる遺伝子変異が生じ、現在ユーラシア大陸で広範に分布していることが明らかとなった。
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