研究課題/領域番号 |
21390144
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
阪井 弘治 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (60260270)
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研究分担者 |
梁 明秀 横浜市立大学, 医学部, 教授 (20363814)
武田 哲 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 研究員 (50396959)
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キーワード | HIV / AIDS / 移植・再生医療 / ウイルス / 感染症 |
研究概要 |
本研究は、近年開発された人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell, iPSC)を利用して、ヒトレトロウイルスの宿主との相互作用、病原性、潜伏・持続感染、宿主抵抗性、感染感受性、抗ウイルス免疫反応(先天性、後天性)などのウイルス学上の大きな諸問題を明らかにし、ワクチン及び新規免疫療法による感染予防と治療薬を開発し、更に臨床応用に備えた実用化のための基盤情報を得ることを狙いとしてる。本年度、我々はHIVの増殖を阻害するよう改変した細胞由来因子(APOBEC3G D128KとSuper)をレンチウイルスベクターにてヒトiPSC(hiPSC)に導入した後、薬剤選択により、これらの因子を恒常的に発現するhiPSCを樹立することに成功した。また、近年報告されたiPSCをワクチンとして用いる研究に着目し、iPSCによる免疫誘導能がHIV-1ワクチンベクターとして有用か否かを検討した。モデル抗原としてHIV-1 gp160をアデノウイルスベクターを用いてhiPSCに導入し、hiPSCワクチンとした。その結果、アデノウイルスベクターによる遺伝子導入でhiPSCにおける高効率な抗原遺伝子発現が可能であり、異常な分化を引き起こさないことが認められた。また、HIV-1 gp160を発現するhiPSCの分化と複製を抑え安全性を高めるために放射線処理又はホルマリン処理をし、両者の免疫誘導能を確認するため、このワクチンをBALB/cマウスの皮下に投与し、抗原特異的な免疫応答をテトラマー法、細胞内サイトカイン染色法、及びウエスタンブロット法を用い評価した。その結果、放射線処理したhiPSCではホルマリン処理をしたhiPSCと比較して、顕著にHIVgp160抗原に対する細胞性免疫が誘導された。本研究により、hiPSCが新たなエイズワクチンのすぐれたベクターとして活用できる可能性が見出された。
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