研究課題
本研究は、近年開発された人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell,iPSC)を利用して、ヒトレトロウイルスの宿主との相互作用、病原性、潜伏・持続感染、宿主抵抗性、感染感受性、抗ウイルス免疫反応(先天性、後天性)などのウイルス学上の大きな諸問題を明らかにし、ワクチン及び新規免疫療法による感染予防と治療薬を開発し、更に臨床応用に備えた実用化のための基盤情報を得ることを狙いとしている。本年度、我々はiPS細胞の技術を用いて感染モデル細胞系の構築を試みるため、アカゲザル皮膚線維芽細胞に山中4因子を導入しiPS細胞を樹立、これを分化誘導し、Rhesus Stem Cell(RSC)を樹立した。本細胞はEBVやRSVなどの各種のウイルスに感染し、感染性ウイルスを産生することを明らかにした。今後SIV感染を実施する予定である。また、HIVのセカンドレセプターであるCCR5を標的とし、体細胞におけるCCR5ノックアウト細胞(HIV感染抵抗性細胞)の樹立に向けた研究を実施した。HIVインテグラーゼ結合因子であるLEDGFのインテグラーゼ結合ドメインとCCR5標的亜鉛フィンガータンパク質の融合遺伝子を構築し、エレクトロポレーション法を用いてHeLa-CCR5細胞に導入した。結果としては極くわずか細胞のCCR5発現低下が見られたものの、導入効率が極めて低く、今後の更なる改良が必要であると考えられる。昨年報告した、HIVの増殖を阻害するよう改変した細胞由来因子(APOBEC3G)を導入したヒトiPSCの血液幹細胞への分化誘導の試みは所定の結果を得られていない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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