研究課題/領域番号 |
21390145
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研究機関 | 財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小原 道法 財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 副参事研究員 (10250218)
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研究分担者 |
平田 雄一 財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (50439452)
棟方 翼 財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (50420237)
徳永 優子 財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80555011)
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キーワード | スフィンゴ脂質 / HCV複製 / 脂質ラフト / RdRp |
研究概要 |
本研究では、C型肝炎ウイルスとスフィンゴ脂質の相互作用を利用することにより、スフィンゴ脂質の新たな機能及びスフィンゴ脂質の動態変化と恒常性維持機構の解析を行った。そこで、まずHCVとスフィンゴ脂質の関係を詳細に解析することにより、1)HCV複製に関わるスフィンゴミエリン分子種及びスフィンゴ糖脂質を同定し、それらがどのように関わっているのか、2)どのように細胞内を移動しC型肝炎ウイルス複製の場(=脂質ラフト)を形成していくのか、3)HCV感染によるスフィンゴ脂質の動態変化と恒常性維持機構を解析した。 HCV持続感染細胞ではコントロール細胞と比較してスフィンゴミエリン合成酵素の誘導がかかっており、さらにHCV複製複合体が存在するとされる脂質ラフトでのスフィンゴミエリン量が顕著に増加していた。そこで、脂質ラフトを構成するスフィンゴミエリンを分子種レベルで同定し4種存在することを明らかにした。さらに、これらSM分子種が濃度依存的にRNA dependent RNA polymerase(RdRp)の活性を上昇させることを見出した。以上の結果は、HCVの感染が脂質ラフト上のスフィンゴミエリン濃度を上昇させ、その結果RdRpを脂質ラフトにとどめさせるだけでなく、RdRpの活性を上昇させることでHCV複製に寄与していることを示していた。 これまでの研究結果から、スフィンゴミエリンは抗HCV薬の新規のターゲットとして効果的であると考えられ、新規SPT阻害剤NA808はヒト肝臓型キメラマウスを使用した実験において、現在臨床で使用されているPEG-IFNと比べ10倍以上の効果を示した。さらに、PEG-IFN及び現在開発中の薬剤であるHCVポリメラーゼ阻害剤との併用で相乗効果を示した。またその作用機序から多剤との併用に関しても相乗効果が期待できる。さらに、新規SPT阻害剤NA808は、効果及び安全面においてとても有望な薬剤であった。
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