当該研究では、免疫記憶細胞の形成、特に「エフェクターTh1/Th2細胞が機能を維持した状態で、生体内でメモリーTh1/Th2細胞に分化し長期間維持される分子機構」を解明することを目的としている。 今年度は、下記の研究を行った。 1.ポリコームやトライソラックス群遺伝子産物によるGATA3遺伝子発現制御機構の解明 ナイーブT細胞→エフェクターTh2細胞→メモリーTh2細胞の各段階において、MLLとポリコーム複合体のTh2特異的な結合交換反応を担う分子機構を解明するための実験を行った。抗MLL抗体、抗Bmi-1抗体、抗ヒストンアセチル化(H3-K9)抗体、抗ヒストンメチル化(H3-K4)抗体等を用いて、クロマチン免疫沈降(ChIP)解析やクロマチン免疫沈降-DNAアレイ(ChIP-on-chip)解析を行なし、GATA3遺伝子座における細胞ステージ別のヒストン修飾とMLLとBmi-1の結合マップを作成した。STAT6依存性のMLL結合領域、STAT6結合領域、転写を正に制御するHAT complexのSTAT6結合領域への結合が分かった。 2.ポリコームやトライソラックス群遺伝子産物によるメモリーTh1/Th2細胞の形成機構の解明 次に、これまでの我々のメモリーTh2細胞の解析で同定されたMLL複合体のコンポーネントとしてのMen1の機能を明らかにするための実験を行った。特に、Men1に関しては、MLLとPol II分子の橋渡しをし、転写活性化部位にMLL複合体をリクルートする機能が示唆されている。Men1ノックアウトマウスを用いて解析を行った。メモリーTh1/Th2細胞の形成、GATA3の発現、メモリーTh2細胞の機能維持に注目して機能解析を行った。さらに、メモリーTh2細胞特異的に発現するMLL複合体の新規の会合分子を網羅的にプロテオームの手法を用いて解析した。連携協力者として、長谷川明洋博士(山口大学)と橋本香保子博士(千葉工業大学)の両名に、上記の解析の一部を行ってもらった。
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