免疫記憶細胞の形成、特に「エフェクターTh1/Th2細胞が機能を維持した状態で、生体内でメモリーTh1/Th2細胞に分化し長期間維持される分子機構」を解明することを目的として下記の研究を行った。 1.ポリコームやトライソラックス群遺伝子産物によるGATA3遺伝子発現制御機構の解明 平成21年から行っている、ナイーブT細胞→エフェクターTh2細胞→メモリーTh2細胞の各段階における、MLLとポリコーム複合体のTh2特異的な結合交換反応に関する実験を終え、GATA3遺伝子座における、細胞分化ステージ特異的なMLLとBmi-1の結合マップおよびSTAT6などによる制御機構を明らかにし、論文発表を行った(Onodera et al.J.Exp.Med.207:2493 2010)。また、GATA3のChIP-Seq解析をTh1/Th2細胞で行い、多くのGATA3とSTAT6の両方が関与するTh2特異的遺伝子を同定した。 2.ポリコームやトライソラックス群遺伝子産物によるメモリーTh1/Th2細胞の形成機構の解明 Menin-KOマウスのエフェクターT細胞を種々の細胞表面マーカーで分画し、メモリーマウスの実験系を用いてその同定を試みる予定であったが、Th17細胞の分化自体にもMeninが必要な事が分かり、この分化制御機構をまず解析した。 3.生体レベルでの解析、ポリコームとトライソラックスによるアレルギー反応・病態形成の制御 ポリコームのEZH2ノックアウトマウスを樹立し、解析をはじめた。メモリーTh1/Th2細胞の形成や機能維持に関する研究を行った。EZH2ノックアウトマウスでは、Th2細胞の分化が亢進しており、現在、生体レベルでの解析を行っている。マウス喘息気道炎症モデルを利用し、アレルギー反応・病態形成における分子制御機構を生体レベルで解明するための基礎実験を終えた。
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