研究課題
胸腺内の負の選択は自己免疫寛容の誘導機構の一つであり、その際自己抗原を強く認識するT細胞が分化途中で除去される。負の選択による自己寛容誘導には自己抗原の提示を必要とするが、胸腺では主に上皮細胞と樹状細胞が自己抗原の提示を担当する。胸腺髄質に局在する髄質上皮細胞は末梢組織特異的に発現するタンパク質を異所的に発現し、未熟なT細胞に提示することで自己反応性T細胞を除去することが明らかとなっている。この機構はヒト自己免疫疾患の原因遺伝子産物であるAireにより制御されることから、自己免疫疾患の発症抑制と密接に関連すると考えられる。組織特異的な遺伝子群が髄質上皮細胞では、どのようなメカニズムで多種類にわたって発現するのか、現在まで明らかといえず、本研究課題はそのメカニズム解明を目的とした。これまでに得た知見に基づき、胸腺ストローマ器官培養実験を利用して、髄質上皮細胞で分化過程依存的に発現する転写因子を同定した。その一つであるETSファミリータンパク質SpiBに関して、欠損マウスを利用して、髄質上皮細胞における機能を検討した。その結果、SpiBは胸腺髄質上皮細胞の分化シグナルであるRANKLシグナルにより誘導されること、SpiBは、組織特異的な遺伝子の発現が増強すること、SpiBはRANKLのデコイレセプターであるOPGの発現を増強し、その結果胸腺髄質上皮細胞の分化を負に制御することを見つけた。本研究は、胸腺髄質上皮細胞の遺伝子発現制御機構の一端が明らかとしたことで、個体の自己寛容成立の分子基盤解明に寄与する。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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