研究課題
われわれは既に、生理活性リン脂質であるリゾフォスファチジン酸(LPA)を生成するリゾリン脂質代謝酵素autotaxin (ATX)がリンパ節高内皮細静脈(HEV)に選択的に高発現してリンパ球トラフィキング制御を正に制御することを明らかにしてきた。また、ATXが胸腺、脾臓などのリンパ組織においてリンパ球が通り抜ける血管に選択的に発現していることを明らかにした。しかし、ATXが果たしてLPAを生成することによってこの現象に関わっているのかは明らかではない。本研究では、まず、ATXはHEV内皮細胞により細胞外に分泌されて内皮細胞表面に固相化された状態で存在することが明らかになった。次に、ATXあるいはATXの産物であるLPAによるシグナリングを抑制する物質を足蹠投与すると、局所リンパ節においてリンパ球のトラフィキングが阻害されることが明らかになった。そこで、この阻害機序を明らかにするために二光子顕微鏡を用いた解析を行ったところ、ATXあるいはLPAシグナリングの阻害により、HEVへのリンパ球接着が軽度阻害されるとともに、リンパ球の血管外移動が強く阻害されることが明らかになった。これは、ATXはLPAを局所的に生成し、ATXの産物であるLPAがリンパ球、HEV内皮細胞に働いてリンパ球の血管外移動を正に制御するという仮説に一致するものである。また、リンパ節から単離したHEV内皮細胞を用いてATX阻害剤、LPAレセプター阻害剤がどのようにリンパ球との相互作用を抑制するのかについて解析を進めているが、これらの結果も上の仮説を支持するものである。以上、ATXのリンパ球トラフィキング制御の作用機序の少なくとも一部は、ATX産物であるLPAを介したものであることが明らかになった。
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