研究課題
研究方法、成果マウスにインフルエンザAウイルスH1N1の全粒子ワクチン、スプリットワクチン、スプリットワクチン+SPG-CpG(ベータグルカンとTLR9リガンドCpG ODNの複合体、50mg)を経鼻投与にて2回免疫後、血清抗体価測定し、その後致死量のA/PR/8株を感染させた。また、実験によっては他の遺伝子欠損マウスを用いたり、抗体などを前投与することにより、TLR依存性に獲得免疫を誘導している責任細胞の同定を試みた。ベーダグルカン-CpG ODNの複合体はウイルススプリットワクチン溶液と混合し経鼻投与するのみで有意に抗ウイルス抗体価を全粒子ワクチンと同様のレベルまで上昇させ(抗体価100-1000倍)、また、2回免疫後の致死量ウイルス感染に対しても全粒子ワクチンと同様の抵抗性を誘導した。その効果の作用機序としてKOマウスを用いて検討した結果、全粒子ワクチンはTLR7を介したウイルスRNAのアジュバント効果、スプリットワクチン+ベータグルカン(SPG)-CpG ODNの複合体の場合はTLR9を介したCpG ODNのアジュバント効果が重要な役割を担っていることが示された。形質細胞様樹状細胞(pDC)という特殊な細胞を除去した際に、インフルエンザ全粒子ワクチンによる肺の自然免疫反応および、その後の抗体誘導能が顕著に減少した。このデータはさらに、ワクチン抗原を暴露させたpDCをナイーヴマウスに移入する実験でも証明された。考察市販のHA-スプリットワクチンはナイーブなマウスには防御効果がなく、逆に不活化インフルエンウイルス全粒子ワクチンの防御効果は自然免疫におけるRNAのTLR7を介したアジュバント効果や、pDCがその中枢となる細胞として働くことが重要であることが生体レベルで明らかになった。今後のワクチン開発研究に大きく貢献すると考えられる。また、ベータグルカンーCpG ODNのアジュバント効果、およびそのメカニズムの一端が明らかになったことによりHA-スプリットワクチンに対する有効、かつ安全性の高いアジュバント開発が可能になると考えられる。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
Sci.Transl.Med. 2(In press)
Exp.Rev.Vaccines 8
ページ: 1099-1107
http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/index.php
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/