研究課題
基盤研究(B)
インフルエンザワクチンと一口に言ってもその形態によって弱毒化生ワクチン、不活化全粒子ワクチン、不活化スプリットワクチンの3種類に分類されるが、ウイルス感染免疫の研究に比べ各ワクチンによる免疫学的作用機序に関する詳細な検討はなされていなかった。今回、マウス、ヒト両方の実験系を用いて、スプリットワクチンでは自然免疫の活性化がほとんど見られないが、同じ不活化ワクチンでも、全粒子ワクチンでは、中のウイルスゲノム(RNA)がTLR7を活性化して、高い免疫原性(抗原特異的CD4T細胞、B細胞誘導能)を発揮することを示した。その効果に形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid DC ; pDC)が必須で、TLR7によるI型インターフェロンを介していること、生ワクチンはさらにRLR, NLRでもない未知の自然免疫シグナルを誘導することを示した(Koyama S et al Plasmacytoid dendritic cells delineate immunogenicity of influenza vaccine subtypes. Sci Transl Med. 2(25): 24ra25.(2010))。次に、臨床でもっとも長く、そして頻繁に用いられているアラムアジュバント(ミョウバン)の自然免疫メカニズムの一端として、アラムが、好中球遊走、その好中球の細胞死、そしてDNAを主成分とするネット状物質(neutrophil extracellular traps(NETs))を放出させることを明らかにした。そしてそのDNAがアラムのアジュバント効果、特にIgEの産生に重要で、炎症性樹状細胞(inflammatory DC)といわれる抗原提示細胞の細胞内DNA認識機構を介していることが明らかになった。実際TBK1、IRF3欠損マウスではアラムのアジュバント効果の一部が著名に減弱していた(Marichal T, et al DNA released from dying host cells mediates aluminum adjuvant activity. Nat Med. 2011 17(8): 996-1002.)。このようにアジュバント(因子)の分子メカニズムを免疫学的に明らかにできるようになり、ワクチンやアジュバントの開発研究において、その有効性や安全性の向上に寄与できることが期待される。
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Curr Opin Virol
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