研究概要 |
我々はCarmalのGukドメインに結合する分子を酵母ツーハイブリッドスクリースング法により探索した結果、CarmalのSH3ドメインがスクリーニングされ、Carmalが自身のSH3とGukドメインで会合することが明らかとなった。また、この相互作用は分子間会合よりも分子内会合が優位であることが判った。CarmalのGuk、SH3の欠失変異や、Guk-SH3会合を失わせるSH3内の点変異(L820P)は、TCRやPKCを介したNF-κB活性化をほぼ完全に失わせた。また、L820Pマウスノックイン(L820P-KI)マウスは、Carmal-nullマウスとほぼ同様の形質(BCR.TCRを介したNF-κB活性化不全によるリンパ球活性化不全、血中IgMの低下、B-1BやMZBの消失、Tregの減少)を示した。このことから、SH3-Gukドメインの相互作用は、抗原受容体を介したNF-κB活性化に必須の役割を演じることが明らかとなった。しかし一方で、L820P-KIマウスは10週齢前後から耳介と尾に、炎症細胞の浸潤を伴う湿疹様の皮膚病変を生じることを見いだした。20週齢前後から耳介、尾部皮膚症状は瘢痕化し、前腕の届く範囲を中心としたびらんを形成した。この症状は点変異ホモ接合体のみに認められ、ヘテロ接合体や,CARMA1-nullマウスには認められなかった。病状を発症したマウスでは、脾腫、リンパ節腫大が認められ、30週齢で血小板、赤血球が減少し、白血球の上昇が認められた。また、血清中のIgG2a/2b、IgMとIgAが低値である一方,IgE値の著しい上昇が認められた。さらに,KIマウスの血清中には真皮に対する自己抗体の存在が確認された。病状を発症したマウスのT細胞をin vitroにて抗CD3抗体で刺激した所,IFN-γの産生量が点変異ヘテロマウスと同等であるのに対し,IL-4は著しく高い産生量を示したことから,KIマウスの病態がTh2分化の亢進に起因している可能性が考えられた。
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