研究概要 |
(1)Carmalシグナリングの制御機構の解析 我々は、CarmalのSH3-Guk領域は、定常時には分子内で会合しているが、活性化時には分子間で相互作用を取ることを生化学的解析により証明することができた。次に、活性化時にCarmalのlinker領域のフレキシビリティを制御する因子を同定するため、キナーゼ標的部位変異体のNF-κB活性化能、SH3-Guk領域に会合する既知分子の影響について調べたが、明確な候補を見いだすに至らなかった。KIマウスの解析の結果、KIマウスはCarmal-nullマウスと同様に、nTregとB1-B細胞の消失、B2-B細胞およびMZB細胞の顕著な減少がみられ、ex vivoでのTCR、BCR刺激後のNF-κB活性化およびJNKの活性化が消失し、増殖およびサイトカイン産生の著しい不全を示した。すなわち、SH3-GUK相互作用はCARMA1の生理機能に必須であることが明らかとなった。 (2)SH3-GUK相互作用の生理的役割と免疫恒常性維持における役割の解析 発症マウスでは、脾腫、リンパ節腫大が認められ、表皮肥厚、表皮真皮へのリンパ球や好酸球の浸潤を伴う皮膚炎、肺炎、尾骨骨髄へのリンパ球、マクロファージ浸潤と巨細胞形成が認められた。また、血小板、赤血球が減少と白血球の上昇が認められた。また、血清中のIgG2a/2b、IgMとIgAが低値である一方、IgEの著しい上昇が認められ、抗真皮自己抗体の存在が確認された。発症マウスのT細胞をin vitroにて抗CD3抗体で刺激した所、未発症マウスのそれと同様に、TCR, BCRを介したNF-κBの著しい活性化不全が見られた。しかし、T細胞のIFN-γ産生が対照マウスと同等であったのに対し,IL-4は著しく高い産生量を示したことから,点変異マウスの病態がTh2分化の亢進に起因する可能性が考えられた。
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